意識付け方法③ 
 交通事故原因と指導方法を考える=原点回帰講習

【やぶ管】

  運転指導の経験のない私が、事故惹起者や業務運転開始前講習に立ち会って強く感じたことは、「基本を忘れている。」ことに尽きます。


  すなわち、車とは?運転とは?を再認識する原点に戻った講習か必要だと感じ、管理者の方に知ってもらえたら。また参考にと思い掲載しました。

  内容は、私が在籍しています「安全運転管理支援チーム」HPにも掲載しております。実技講習という面から若干詳しくなっておりますので参考にしたい方は、

 ≫管理者支援ページ(下記内容と同じで、他に参考資料もあります。)

「▼ 交通事故対策に悩んだら「原点回帰」の体験型講習を!(交通事故形態に対応する事故原因と指導の考え方)」

≫原点回帰講習(資料の見本あり) ≫貨物車向け原点回帰講習

をご覧ください。

 

 

▼交通事故形態 と 原因 = 指導項目          

 社員に交通事故防止について指導しようとした場合、「何から指導しようか?」と悩んだときは下記表を参考にしてください。

 

 表は、交通事故形態に対応する事故原因と考えられる項目に◎○△を付け、重点指導ポイントを把握しようとしたものです。

 主たる原因に◎を3つまで付け◎の枠には色を付けました。

 また、二次的要因として○△の印を付けています。表を固定概念で見ずに、自社分析での原因が他にある場合はその項目に◎をつけて検討してください。

 下記内容を交通事故防止指導の一つの考え方としてご覧ください。

事故

原因

形態

信号

標識

無視

停止

徐行

安全

確認

速度

車間

距離

合図

車両

感覚

死角

操作

誘導

出会い頭        
右  折
左  折
施設出      
施設入      
バック      
追  突            
発進追突        
進路変更    

▼事故原因から見る指導の基本

 

 表の原因項目の中で全てに◎○△の印があるのは「安全確認」と「速度」だけです。すなわち、指導の基本は「安全確認」と「速度」ということになります。

 

 「安全確認」と「速度」、言葉で話すのは簡単ですが、それだけで社員は理解するでしょうか?

 これを解決するためには体験指導しかありません。

 自分自身が体験してこそ管理者の説明の意味が理解できると思います。


 交通事故の原因を考えた場合、また、交通事故発生報告書の内容を分析しても下記表の事故原因が重複・複合して発生していることが分ります。

事故

原因

信号

標識

無視

停止

徐行

安全

確認

速度

車間

距離

合図

車両

感覚

死角

操作

誘導

×

事故

形態

出会

い頭

右折

左折

施設

施設

バッ

追突

発進

追突

進路

変更

 この、重複・複合して発生する原因=ドライバーのエラーということになり、ドライバーは、エラーについて

知っているが、理解していない。」「理解していないから行動できない。ことが大きな要因となっています。

 

 では、事故原因=防止の基本である「安全確認」「速度」をどのように指導するか?

 「安全確認」は、事故を起こさないために、「見えてなかったもの(危険)を見る」「動きを見て予測」するための行動です。

 また、速度が速くなると、視力が低下し視野も狭くなり危険の発見が遅れたり、見落とし・見誤りなどが起こります。また、停止距離も長くなります。

 

 しかしその前に、指導者として最低限教えておかなくてはならないことがあります。 

 それは、「社員自身(人)」と「社員が運転する車」ついてす。

自分が運転する車を知る」「自身の車両感覚はあてにならない」「車は急には止まらないことを理解させる必要があるでしょう。

 

 これが原点に戻った「原点回帰講習」なのです。

 

 この講習を体験しておけば安全確認の必要性が理解できます。

 

受講者の感想  ( 会社に提出した感想文 )

 

▼ Aさん

・運転中の死角に関しては、これほどにも見えていない空間があることに驚き左右の確認や、巻き込み確認、ミラーのチェック、自分の目でのチェックが重要であることを気づかされた。

・視界の悪い住宅街での交差点では、急に人や自転車、また車があり曲がり角で一旦停止しただけでは相手側からは死角になっていることもあり改めて二段階停止の大切さを感じた。

 ▼ Bさん

・普段細かい意識を持って運転を出来ていなかったと感じた。

 特に、サイドミラーやバックミラーのみで目視を怠っていた等、車間距離のとり方や、幅寄せする際の注意点など基本的なマナーを再度認識することができた。

・この教習で学んだことを今後の営業活動における運転で活かし、無事故を心がけたいと思う。

▼ Cさん

・車間距離が狭く、相手に威汗感を与える運転をしていたので、もう少し車間距離を広くとり、余裕のある運転を心がけたい。 ・信号などでの停車時は、ブレーキを踏むだけだったが、事故防止のため、ギアをパーキングに切り替えることを忘れず行いたい。 ・車幅を理解していなしで、感覚を身に付けたい。

▼ Dさん

・目印を決めるなど、感覚だけに頼らず正確に運転する方法を学ぶことができ、常に誰かが横に乗っているつもりで、改めて安全運転を心がけようと思った。・正しい運転をもう一度教えていただくことで、変な癖が付くことを防げた。免許取得時よりももっと具体的な質問をすることができた。

▼ Eさん

車の死角・車間距離を実際に計測した後、苦手とする駐車の(仕方を学びました。

学生のときにはあまり実感できていなかった車の死角・車間距離は、実際に計測することで実感がわき、日ごろの運転においても充分に注意しなければならないと感じました。

駐車の仕方は一番ミスの少ないやり方を教スていただいたので、現在、駐車の際には教習所でならったやり方で極力行っています。

 

 自分が運転する車を知る

 

●  自分が運転する車の車長、車幅を知っておく。

   車長、車幅を言えない。→ 基準がない。

   自車がわからないから他車を基準にできない。

≫ 知ることで基準ができます。→ 車庫入れや狭路通行等→ ほとんどの人がまともに答えられません。

≫ 社員の人に聞いてみてください。どれだけの人が言えるでしょうか?


● 死角の存在と距離を把握しておく。

  死角(前後左右)と死角距離が分れば基準ができ車を誘導しやすく、また事前に障害物等の安全確認をするようになります。

 


講習の感想 ( 団体講習 車両認知度、死角、車両感覚 )

≫とても分かりやすく、改めて車の死角を再認識できた。 

≫死角や距離感の説明がわかりやすく良かった。 

≫自分の思っている死角の範囲が広いことに少し驚いた。今回はそれがわかってよかった。

≫車輌から対象物までの距離及びミラーと目視予測と実測の違いを再認識した 

≫車両感覚を知る講習は感覚と実測値では大幅な差があることを再認識した。 

≫実習内容がわかりやすく今後の運転の勉強になった。 

≫自分の予測と実際の距離に誤差があることがよく分かった。 

≫実測値が予想より大きいことに驚いた。

≫感覚に頼っていたことが多かった。 

≫思いのほか死角の恐ろしさを実感した。 

≫自己の感覚は実際のものと違うことが明確にわかり、知識の重要性を再認識した。  

≫予測値よりも実測値との誤差が大きく違ったのに驚いた。 

≫ミラーの死角が良く分かった。 

≫感覚の誤差が多いのに驚いた。 

② 自身の車両感覚はあてにならない

 

● 基本的なこと、例えば、ラインにタイヤを乗せれない。

 車幅感覚がつかめていないため、狭路で電柱に擦ったりする。

 

● 前後のカラーコーンに車両前部・後部を合わせられない。

 死角の存在と自身が思う車両感覚はあてにならないため、「停まる、確認する」「見えなくなる死角を事前に見る」ことの意味が理解できます。


③ 車は急に止まらない

 

● 人が歩く速度、5Km/h前後はすぐ止まると思っている人が殆どで、

 反射時間=空走時間=空走距離 は無いと感じています。


 5km/hの停止距離→ 1m前後→ ほとんどが空走距離

 「車は急に止まらない」ことを知れば、車間距離と信号のない交差点での二段階停止の意味が理解できます。

●(追加)停車時の車間距離

 低速時の停止距離体験をした機会に信号待ち等停車時の前車との車間距離を実測してみてください。


 死角距離との関係、前車(バックミラー)から見て威圧を与えていないか? → 前記停止距離等から発進追突防止の指導になります。

 ▼ 原点回帰講習の指導順番

 ①~④の順で実施すれば理解度が高まりまり説明もしやすくなります。

事故

原因

信号

標識

無視

停止

徐行

安全

確認

速度

車間

距離

合図

車両

感覚

死角

操作

誘導

 






 

 

自社

体験

講習

項目

 




低速時

停止

距離

体験

停車時

車間

距離

体験


車両

感覚

自車

認識

死角


     

 

 
           ▼           ▼




安全確認の必要性を理解させる

※ 詳しい内容は▼ボタンから

速度についての考え方

 

 ▼ 車は急に止まらない! ことを、まず理解させる必要があります。

 人の車に対するイメージは、下の表のとおり「車の利便性」で、「危険」を感じる人は4.6%しかいません。

 また「止」「停」という漢字はイメージにはありません。

 車の主たる目的は、移動時間の短縮と物・者を運ぶために利用されます。

 しかし、車は停止してこそ、すなわち、止➡走➡止 ことで本来の目的が完了するのではないでしょうか?

 また、危険を回避するためには止まることが大きな要素となります。

 

 この、止まる。停まる。というイメージと、必要性を実技講習を通じて理解させることが重要です。

 

▼ 速度についての指導 

 ≫ 表を見てください。速度10km以下の事故が約40%占めています。

    交通事故の危険認知速度(交通事故直前の速度)の統計によりますと、徐行の速度である10km/h以下が約40%占めているのです。

 なぜでしょうか?

 

 ドライバーは、10km/h以下の徐行速度は、「すぐ止まる。」というイメージを持っているからです。

 

 現実は、人の歩く速度5km前後の速度であっても停止距離は存在し、そのほとんどが空走(認知・判断)距離(時間)なのです。

 この低速時の停止距離(空走距離+制動距離)を体験講習で「車は急に止まらない」ことを理解できれば、速い速度の危険性も理解できると思います。

 また、交差点事故防止講習時での理解度(二段階停止等の必要性)が高まります。

▼安全確認についての考え方

 

▼「安全確認」を「停まる。確認する。」という意識に切り替えてもらう必要があります。

 

 ◆事故形態色枠の指導(出会い頭、右折、左折、施設出・入)

 出会い頭、右折、左折、施設出・入の事故が発生する場所は、車と人、道路が複雑に交わる場所です。

 この場所で事故を起こさないための重要ポイントは、安全確認が一番ですが、安全確認を確実に行うためには減速また一時停止が重要になります。


 この種の事故を起こした人は、「安全の確認はしたが、自転車が飛び出して来た・・・」等との弁解を多く聞きます。

 しかし、確実な安全確認方法は、停止しての安全確認がベストなのです。

 すなわち、「安全確認」を「停まる。確認する。」という意識に切り替えてもらわないと、この種の事故は減りません。

 

 また表のとおりドライバーが運転する車の死角と、建物等の死角を知る必要があります。


 車を運転していると、すべてのものが見えているような錯覚に陥ります。

 しかし、現実は車の死角や建物・他車等による死角が存在し、死角にある危険を知るためにはドライバーの安全確認が必要不可欠で、確実な安全確認をするためには減速また停まっての確認が必要となります。すなわち「停まる。確認する。」を体験講習を通じて理解させればこの種の事故は減少することでしょう。

バック事故の考え方

 

▼ 事故形態(黄色)色枠バック事故の指導

  交通事故の相手方が車や人の場合、どちらかのドライバーが回避行動をとれば、防げる交通事故も多いのですが、

●駐車車両や工作物への衝突は、

 ≫ 意思がないので回避してくれない。

 ≫ 回避できるのは、ドライバーのみ。

 ≫ 原因は全てドライバーにある。

ということになります。

 

 バック事故を無くすには、原因であるドライバー自身が、車の特性等を理解したうえで

    停まる。 確認する。 やり直す

意識をもって実践すれば回避できます。


■バック事故の指導

 バックの運転行動は、右の図のように、安全確認、死角、速度調整、停止距離、車の誘導、車両感覚、内輪差、外輪差など、運転行動のほとんど集約されたものです。

 

 バック時の指導は、低速がゆえに車の誘導方法の中に安全確認を入れての指導が先行しますが、本来は上記にある速度、死角、安全確認の内容と車両感覚の講習(原点回帰)をした後に、車の誘導方法を指導すべきではないでしょうか。?


█ 衝突部位を見れば原因と指導方法がわかる。

 衝突部位から見た分析と指導方法で貨物車用と乗用車用の二種類があります。


●バック事故の指導ポイントは4つで、この4つが実践できればバック事故は激減するでしょう。

なお「バック事故分析&指導ツール」は無償公開ですのでバック事故でお悩みでしたら使ってください。


 「原点回帰講習」が実施した後は、安全確認をするように!」の声かけ指導を「止まる(停まる)。確認する。 やり直す。のフレーズで指導してください。

 速度については「車は急に止まらない。」また「人の車両感覚はあてにならない。」、「見えなくなる死角を事前に見る。」などワンフレーズで意識付けをすれば上記の体験講習が生きてくることでしょう。